介護施設でアルバイトをして金言を得た話

 私は小さなデイサービスセンターでアルバイトしています。「ぜひこういう仕事をしたってことはいろんな人に言ってくれたら嬉しい」と言っていただけたので、個人情報などには触れず、つらつらと私のデイサービスでの体験を書いていこうと思います。

 

 元々、母が介護士として働いていたことや、実家で介護の必要な曾祖母と暮らしていたことなどもあり、デイサービスセンターで働くことはそんなに抵抗はありませんでした。いや嘘、本当はめちゃくちゃ抵抗ありました。

 なぜかと言われれば、理由は二つあるんですけど。一つ目は、うちの曾祖母がとても頑固な人だったから。デイサービスから家に帰ってくるとすぐブツクサ文句を言うし、めっちゃキレるし、可愛げがないし、もう年を取っていたからいろいろなことが出来なくなっていたし、こちらの感覚からしたら普通にちょっと不快になるようなこと(ほじった鼻くそを肥料だと主張して観葉植物の土に投げ込むとか、食事の仕方とか)もするし、そういうのを間近で見ていたんですよね。他人なら良いけど、一緒に暮らすとなるとちょっと話は別。私が小さいときは毎日のように曾祖母と喧嘩していました。

 二つ目は、母から老人ホームでの話をよく聞いていたから。(老人ホームとデイサービスは性質が違うので、母から聞いていたほど私のアルバイト先は過酷ではなかったです)利用者の方にめちゃくちゃ引っかかれるだとか、うんこを投げつけられただとか、すごい剣幕で怒鳴られるとか。うちの母は楽観的というか、些細なことはものともしないので、「おじいちゃんに『なんだお前マスクなんかして!失礼だぞ!』って言われたから『私結核なんだ、マスク外そうか』って言ってゲホゲホ咳したら『ギャー!』って悲鳴あげられたんだ」とかいって大爆笑してました。良いのか分からないけど、母はいつも楽しそうに仕事の話をしてくれます。良いのか分からないけど。母、図太すぎやしないか。まあでも仲良くはやっているみたいなので、良かったです。

 私は母とは違ってかなり繊細なので、多分利用者さんの言うことをいちいち真に受けてしまうし、あんまり利用者さんたちと距離を縮めることもできなそうだな、なんて思っていました。それでも介護施設でアルバイトをすることにしたのは、母が見ているものを私も知りたかったし、自分自身もいつか迎える老後について今のうちから考えてみたかったからです。

 

 私が働いているのは『デイサービスセンター』といって、老人ホームなどとは違い、日帰りでお年寄りの方たちの介護を行う場所です。入浴やトイレのお手伝い、食事、レクリエーション、掃除、送迎が主な仕事になります。自分でしっかり喋れる方や食事をとれる方が多いので、老人ホームや病院なんかよりは比較的働きやすいとは思います。ただ、一人では歩行が困難な方も多く、かなり気を配らなくてはいけません。その人によって違いますが、腰に手を添えたり、腕を組んだり、前から手を引っ張ってあげたり、何らかの介助をする必要があります。

 私は大体、出勤するとすぐに入浴の準備をして、利用者さんたちの手を引いてお風呂場に入ります。服を全部脱ぐのを手伝って、頭と体を洗って、全身を拭いて、服の着替えを手伝い、最後に頭を乾かします。これだけの過程でも注意しなければいけないポイントが山ほどあって、例えば服を脱ぐときには本人が出来る範囲の部分は自分でやってもらうようにしたり、ズボンやパンツを脱がせるときは手すりにつかまってもらってグイッと引き下げます。(大抵みんなオムツです)頭と体を洗うときは、人によって適切な温度が違うから利用者さんの様子をよく見る必要があるし、椅子に座ってもらうときは必ず腰を誘導してあげなければいけないし、その人の身体の具合によってどこまでお手伝いするかの範囲が違うし。私は人の身体をあらったり拭いたりする力加減が全くわからなかったし、服を着せるのも、お年寄りだからと思って壊れ物を扱うかのように服を着せようとするとなかなか上手くいかなかったりして、かなり神経を使いました。転んだら命取りだから、足元には絶対に気を配らなくてはいけないし。

 正直会話も大変でした。自分の家に曾祖母がいたから、お年寄りとは会話できると思っていたけれど、他人となるとやっぱり勝手が違う。正直、「この話通じるかな?」「この人、私の話どこまで理解しているんだろう?」「この人脈絡がないけど何の話をしているんだろう?」「これ言ったら失礼になるかな?」とか、なんていうか、本当に、勝手が分からないんですよね。しかも、敬語を使うべきか、ため口で話すべきなのかも分からない。介護士の方ってよく利用者さんにため口で「~しようね」とか話しているイメージなんだけれど、私にとっては人生の大先輩だから、そんな気さくな言葉遣いしていいものか…と思っていました。だってやっぱり尊厳があるし、そんな幼児に向かって話しかけるような話しかけ方したら、ムカつくんじゃないかなって。

 この施設の社長の石井さん(仮)は、その辺をとても心得ている方でした。上手いんですよね、話し方が。決して相手をバカにしているわけでもないし、「お世話してあげている」感がなくて、その上まったく他人行儀ではない。フレンドリー。だから相手も全く嫌な気持ちにならない。利用者の皆さんは石井さんに心を許しているようだったし、私なんか本当にペーペーだなって。

 私が「どんな風に話したらいいか分からない」と言うと、石井さんは「ずっとかしこまった口調だとどうしても距離が遠くなってしまうから、ある程度崩す必要はあるけれど、かといって友達みたいに話すのも違うのよね。してはいけないこと、しなくてはいけないことっていうのがあるからそこは厳しくいかなくちゃいけない。空気を読む!って感じ」と言ってくれました。「全部うんうんって優しく聞いてあげることも大事だけど、それだけじゃ駄目よ。やらなくちゃいけないことはやらないとだから、そう言う時は拒否する隙を与えないように話を進めちゃうのよ」と。なるほどなあ。他人だったら全部優しく聞いてあげてその場をやり過ごしちゃえばいいけど、この人は本当に利用者さんたちのことを大切に思っているんだなあって思いました。

 石井さんは、マジで利用者さん一人一人への対応の仕方を心得ていて、この人にはこう、この人はこう、というのをすべて理解していました。普通は出来ない、と思う……。「言葉をすべて受け入れる必要はないから、その人自身のことを受け入れてあげて」ということを、私は最初にここの施設で働いた日に石井さんに言われました。この言葉はだいぶ響いたし、介護のお仕事だけじゃなく、いろいろなことに言えるんじゃないかなって勝手に感じてました。

 

 ただやっぱりびっくりしたのが、歩くのが困難な方が一人で誰もいないお家に鍵を開けて入っていくことや、結構な介護を必要とする方が同じくらいの年齢の配偶者さんと二人きりで暮らしていたり、そういうケースがたくさんあるってことです。話には聞いていたけれど、実際に見ると「本当に、本当に大丈夫なのかな?」と思ってしまいます。自分がお手伝いをしていても1人では出来ない部分がたくさんあったのに、できるのかな?って。ここでアルバイトをしたおかげで、実感を持って介護について考えられるようになりました。

 

 最後に、本当にお年寄りと言ってもいろいろな人がいます。身体的なことだけではなく、性格がね!「ありがとう」とにこやかに言ってくれる方、何かの拍子に突然不機嫌になってしまう方、怒りだしてしまう方、「ごめんね」と言って泣いてしまう方、など。老いって、こういうことなのかなあと薄ぼんやりと、私の中では考えがまとまりつつありました。

 自分がもし、年をとって、いつか他人に服を脱がせてもらわないとお風呂に入れないくらいになってしまったら、(見下しているわけでも憐れんでいるわけでもなんでもなく)私はきっと申し訳なくて申し訳なくて死にたくなってしまうと思う。自分が嫌になってしまうと思う。そういうのを越えて、今ここにいるこのお年寄りの方たちって、すごくすごく強いんじゃないかなあ。実際彼らが何を考えているのかなんて分からないけれど、少なくとも私にはそういうのを耐えられる精神の強さがまだない。

 

 ただ、みんなとても良い方たちで、私に話しかけてくれたり、手を振ったりしてくれて、すごく嬉しい気持ちになります。私にはない強さだとか知識を持っている方たちと交流をすることが出来るっていう点で、私はデイサービスでアルバイトをしていてとても楽しいです。

 

 

私がプロデュースしたい夏フェスを考える遊びをしてみた

 疲れた。社会の荒波に揉まれて疲れた。意味のある事しか考えない人間に疲れた。「社会や人生を明るくするのは意味の無いことや無駄なことである。」という名言をいま私が考えたので、今日はとことん意味の無いことや無駄なことに思いを馳せていこうと思います。

 小学生がよく作るやつ分かりますか?

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こういうやつ。1とか2とか好きな番号を言っていくと最終的にキャラクターが出来る奴。私は大人なので、こんな子供じみたことはもうしません。見せてやるよ、大人の底力を。

 

そんな気持ちで私が意気込んで作ったのはこちらです。どうぞ。

 

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これが大人の発想力で作った、その名も「バンド自動生成メーカー」。これを使用してバンドを作り、私は夏フェスinよしこの家のセトリを考えることにしました。まずは乱数メーカーを使用し、1つめのバンドを確定します。

 

さて、結果は「1・1・2・1・1・5」となりました。表を見て照らし合わせると

「ジャンルはJ-POPで、人数は1人。舐めてそうなビジュアルで、地元では有名。ファンは若者が多く、よく炎上する」

となりました。さっそく一人目からドギツイアーティストがきましたね。てか一人だったらバンドじゃねえな、ガハハ。それではこのアーティストについて詳しく紹介(というか妄想)していきましょう。

 

 

1 SHOU5

  本名竹内省吾。男性。25歳。出身は兵庫。甘いマスクから放たれる色気のある歌声は観客をメロメロにする。女性ファンも多いが、車好き遊び好きなのが高じて男性からの支持も厚い。関西圏の若者には知られているが、東京まで行くと知らない人の方が多い。正直碌なファンがいない。

 今回このフェスで披露してくれるのはデビュー曲「Your…」とアンサーソングの「My…」。

 ちなみに二か月に1回炎上する。直近の炎上はアンチコメントの晒し上げが原因のやつと他の男性アーティストを名前を隠して本アカで叩いたことが原因のやつのふたつ。血に飢えてるんか?

 

 

 それでは続いてのアーティストに参りましょう。乱数メーカーが出した数字は「1・5・5・5・5・1」。偏り過ぎじゃない?これ本当にあってる?乱数?いやまあ仕方ない、すべては乱数のまにまに。さて表と照らし合わせます。「ジャンルはJ-POP(またかよ)で、5人(AAAのパクリか?)。美しいビジュアルで、毎年ツアーをやるほど人気。センスの良いファンが多い」。つまらんし、普通にいそうなアーティストだな。このフェス大丈夫か?それでは詳しく紹介していきます。

 

2 Mr.hammock

 「ミスハン」の愛称で親しまれる5人組のグループ。女性ボーカルのAKIと男性ボーカルのHARUが主に歌を担当する。コーラスはNATSUとFUYU、DJはTSUYUである。コーラスのNATSUとFUYUは女性でDJのTSUYUは男性。珍しい形態のグループとして注目を集めた。5人それぞれが季節をイメージした髪色や服装をしていることが多く、容姿も優れていることから「まるで妖精のようだ」と言われることもしばしば。アンチからは「ビジュアルだけで歌唱力はイマイチ」と叩かれる。しかし全国ツアーを毎年行い、毎度満員御礼である。

 今回披露してくれるのは新曲の「12月のカタバミ」。

 

 さて二組目は鼻持ちならないアーティストでしたね。次に行きましょう。つづいて出た数字は「4・2・3・4・4・3」。照らし合わせると「ジャンルはアニソンで、二人組。個性派のビジュアルで、武道館を一杯にできるくらいには人気。ファンにはヤンキーが多い。二人の出会いは△△(のちほど考えます)」となりました。3組目、これまでの二組とはだいぶ毛色が違いますが、大丈夫でしょうか?ファンにヤンキーが多いアニソンアーティスト???

 

3 童童ズ

 バキバキ童貞メガネ二人組のアーティスト。少年院時代に二人は出会い、暇を持て余して視聴したアニメに感銘を受けたことから二人の音楽活動が始まる。路上ライブ時代は少年院の知り合いが多く見に来てくれたこともあり、すぐにSNSで話題となった。

 現在はバキバキ童貞メガネの容姿で活動をしている二人だが、少年院時代の眉なしパッキンしたピアス写真が流出し、一時騒然となった。

 今回披露していただくのは「銀河の行く末、桃源郷にて。」。あの有名なアニメの主題歌にもなった曲だ。

 

 

 とんでもないです。このままではSHOU5が好きなアホみたいな若者たちとMr.hammockファンのミーハーと童童ズの少年院時代のお友達が集まってしまってとんでもない夏フェスになってしまいます。主催者の私の居場所がありません。それでは次を最後のアーティストにしたいと思います。頼むぞ…。

 

「3・3・2・1・2・5」

表と照らし合わせてみましょう。

「ジャンルはレゲエ、3人組。舐めた見た目をしている。地元では有名で、小中学生のファンが多い。炎上をよくする」

もうだめだ。

 

 

4仙蔵石枕

 神奈川発の男性三人組レゲエグループ。都会の夏をテーマにした曲をよく歌うが当人たちは神奈川出身。誰にでも分かる単語を組み合わせた歌が多いので、小中学生のヤンチャなボーイズたちからの支持が厚い。中学生ヤンキーの彼女は大体こいつらの曲をLINEミュージックにしている。

 金髪のTAKAと刈り上げのMASAが主にボーカルを担当する。TERUも歌いはするが、基本的にやんややんややっているだけ。

 今回は「お前以外なんもいらねぇ」「東京の太陽に灼けろ」の二曲を披露してくれる。

 

 

 

 

 

 やり直していいですか?こいつらでフェスやりたくないです。

段ボールを解体するのが遅いと人権がない世界へ

「ここで顔見知りが出来たら終わりな気がする」

このことに関して語るとき、私はよくそういうふうに言う。『このこと』っていうのは派遣のバイト、特に宅配業者のアルバイトのことなんだけど、私と同じようにヤ〇トや佐〇の派遣バイトを経験した人は大抵「わかる」って言ってくれるんだよね。

 

私が初めてヤ〇トのバイトに手を出したのは寒い冬の事だった。めちゃくちゃお金がなくて、それなのに予定はめちゃくちゃあった。どうにかしてお金を手に入れられないものかと登録した派遣会社で、さっそく紹介されたのがヤ〇トの深夜バイトだった。夜10時から翌朝の6時で1万円。1万円!これを五回やるだけで私のバイトの月給を上回るのか!ほかにこんなに割の良いアルバイトはあるまい、と当時の私はニマニマしていた。

京都駅前の事務所から現場まで向かう途中の車で、同級生の男の子と仲良くなった。とても気さくに話しかけてくる人で仲良くなれそうだと思ったのだけれど、「クラブによく行くんだよね」と言うのを聞いて、もしかしたら仲良くなれないかもしれないと思いなおした。彼は「いやあ、このバイトあんままともな人がいないんだよね。まともな人がいて良かった」となかなか失礼なことをまあまあ大きい声で言っていた。多分彼もそんなにまともではないと思う。

 バスの中はすごくムワッとしてて、外は真っ暗で、なんだか切なくなった。音楽を聴いている人、誰かにLINEを送ってる人、眠っている人、いろんな人がいて、みんなこれから一様にヤ○トで働く。出荷される牛みたいな気持ちだ。ドナドナドナドナ。目的地に到着すると、みんな迷いなくバスを降りて歩きだした。私は歩く方向も分からずソワソワしている。ドナドナドナドナ。休憩所みたいなところはタバコと石油の匂いで臭くて息苦しかった。夜十時近くだったせいもあってちょっとウトウトする。わたしの斜め後ろではネパール人らしき(インド人かもしれないしアメリカ人かもしれない)数人の男性がなにごとかを話してクックッと笑っている。彼らはバニラの香水みたいな独特の匂いを漂わせて菓子パンをかじっていた。わたしの隣ではクラブ通いの男が真面目くさった顔で腕組みをしている。金髪の女の人、わりと歳がいった感じのおじさん、キラキラした若者のエネルギーを放つ男集団、三色チーズ牛丼顔の男の子...とかがいた。わたしは何に分類されるんだろう。支給された靴とヘルメットは前回誰が履いたかも分からないもので、ラウンドワンのローラースケートのやつよりずっと臭くて湿っていた。

 訳もわからぬままに作業場にやってきて、最初は特に指示もされないから雰囲気で動いた。大きいカゴみたいなのをゴロゴロ転がして、それっぽい場所に移動させた。なんでここに移動するのかとか全くわからなかったけど。これが朝まで続くのはいろんな意味でしんどいな、と思い始めたときに別な仕事を指示された。ベルトコンベアにたくさん荷物が流れてくるので、自分の担当番号の荷物を引き込む、という極々単純な作業。結論から言うとわたしはこれを一晩中やった。朝6時までやり続けた。頭がおかしくなるかと思った。番号のついた荷物を延々と見続けた。この仕事機械化しろよ早く。っていうかできるだろ機械化。

こんな単純作業にも関わらず、わたしは社会不適合者なのでたくさんミスした。体育の先生みたいなおばちゃんにバカみたいに怒鳴られた。そして何より冬の深夜というのは私が思っていたよりずっと寒かった。パーカーの上にGジャンを羽織っていっただけのスタイルだったわたしはあまりの寒さに涙がちょちょぎれた。人から借りたGジャンなのにちょっと作業場の独特の匂いが染み付いてしまってもっと泣きそうになった。ベルトコンベアの音がうるさかったので結構大きな声で一人で歌っていた。手元は忙しいのに頭の中は暇だった。ここでは私は誰よりも哲学者になれた。生きることとか働くこととか私の存在価値とかお金のことに思いを馳せては落ち込んだ。私を救ってくれるのは刻一刻と進んでいく時計だけだった。あんまりにも惨めったらしい顔をしている私をみかねた男の人が時折励ましてくれた。30歳、髭、フリーター、ヒョロヒョロのっぽ。って感じのわたしの性癖を集約したかのようなおじさん。私が25歳のフリーター女だったら多分恋してた。

第一回目の日雇い労働は無事に(?)終わった。翌朝わたしは家に帰ってシャワーを浴び、そのまま大学に出席した。偉い、偉すぎる。最初は何度かやろうと思っていたヤ○トのバイトだったが、終わってみると二度とやりたくなかった。しかし私はこの日からそう遠くない日にまたヤ○トにお世話になることになった。お金がなかったからである。

夜を明かす労働はしんどいと思ったので、2回目以降は22時までのシフトでいれることが多かった。それでもいろんなことがしんどかった。自分の祖母と同じくらいの女性が怒られているのを見るのがしんどかった。ぶかぶかのヘルメットをかぶって必死で働いている様子がしんどかった。わたしは早く動くことがとても苦手なのでよく怒られた。段ボールを解体する作業の時が特に顕著にわたしの鈍さがでた。周りの人が5個くらい解体している間にわたしはひとつしか解体できていなかった。惨めof惨め。段ボールを早く解体できなくったって生きていけると思っていた。段ボールの解体が遅いだけでこんな惨めになるなんて。

職業に貴賤はない、と口ではいいながらも肉体労働をどこか下に見ている自分がいた。頭を使ってクリエイティブなことをすることばかりが仕事だと思っている自分がいた。ここでは間違いなく私が1番弱くて使い物にならない人間だった。恥を知るべきである。

ヤ○トのバイトの帰りのバスの中からはいつも工場の光やたなびく煙が見えていた。すごく綺麗で、この光に労働の影を感じてめちゃくちゃ切なくなっていた。多分もうヤ○トのバイトはやらない。

「ビジネスに興味ありませんか?」に乗っかってみた話

 この間、「ねぇ聞いて、こんなことがあったんだけど…」と話し出そうとしたら「いや、ブログで見るから別に言わなくていいよ」と言われて悲しくなりました。ブログやめようかなと思った瞬間でしたね。

 

 最近Twitterやインスタでビジネスアカウントめちゃくちゃ見かけません?「月収〇〇万円稼ぎたくないですか?」「10代や20代の若者が中心に活躍しています!」明らかに怪しい。誰がこんな実態不明のビジネスに乗っかるんだ。宣伝下手か。本当に稼げるとしてもこんな宣伝下手な人たちと一緒に活動したくない、アホがうつる。めちゃくちゃ失礼なこと言ってますね私。で、大概彼らはDM送って無視されてるか、遊ばれて晒されてる。なんでやり方変えないんだろう?普通に不気味じゃないですか?そう思った私はなんかもう失うもんとかねえよな、と意気込んで、ビジネス垢の方々の話にとことんまで乗っかっていくことを決めました。

 候補になるビジネス垢の人間はめちゃくちゃ多かったのですが、私はとりあえず四人の人とコンタクトを取りました。一人目はどうやら20歳以上の方限定のビジネスを展開していたらしく頓挫。3月で20歳になります!という大ウソをなぜか(本当になぜか)ついてしまったせいで、最近になって「そろそろ20歳ですよね?ビジネスどうですか?」みたいなLINEが来てウケました。

 二人目は電話会談まで持ち込みました。ただこの人はビジネス垢として、というよりもそもそも人間としての信憑性がめちゃくちゃ薄い男だった。まずLINEを交換したんだけど、(なぜか頑なにTwitterのDMではビジネスの説明をしたがらないのがビジネス垢の共通項である)LINEのプロフィール画像がひどかった。ポカホンタスみたいな女の人とならんでいる写真なんだけど、グレーの半袖Tシャツをきていて、乳首が浮いてる。めちゃくちゃ乳首が浮いてる。別にこいつが常日頃から乳首を浮かせている男であったとて私には何ら損害はないのだが、なぜ乳首が浮いている写真をプロフィール画像に設定したのだろう?気づかなかったのだろうか。乳首を浮かせて許されるのはハリウッド女優と犬だけだ。とにもかくにも私はこの人と電話をした。昼休み終了間際の時間にさばいた。ちょっと講義に遅刻したけれど、貴重な体験のためなら単位なぞいくらでもくれてやる。彼はつまらない自己紹介から始め、(つまらなすぎて何も覚えていない)彼自身や彼のやっているビジネスについての魅力のアピールが全くの不十分なまま「本気で稼ぎたい人だけを探している、ぜひ直接会って話を聞いてもらいたい。今月で募集はやめようと思っているから、チャンスは今しかない」とのたまった。しかも私が京都在住であることを知りながら梅田のカフェを場所として提案してくるゴミっぷりである。本気でやってるならとんでもないアホだ。何も実態が分からない上に魅力もないビジネスのために誰が交通費往復800円をかけて大阪まで行くというのだろうか?今しかない、ということを押し出してくる点は評価に値するにしても、到底やる気があるとは思えない。私が熱心なふりをして「ぜひお話うかがいたいです!」というと「カフェの場所決まったらまた連絡します!」と彼は言った。なんだかんだで会えるのを楽しみにしていたのだが、結局彼から連絡が来ることは無かった。なぜ私が振られた気持ちにならなくてはいけないのだろう。

 失意の中、私がコンタクトを取った三人目はブロガーの女性だった。「ブログで稼ぐことに興味ありませんか?」という彼女。正直興味自体はまあまああったので「興味あります!」と私が返事をすると、これまたLINEを交換して電話することになった。この女性は二人目と同様に「時間がない、今しか紹介できない」ということを強調し、やはり二人目と同様に梅田のカフェを指定してきた。このやり口流行ってんのかな~と思いながら、とりあえず約束は取り付けたものの、まあこれもどうせまたダメだろうなと諦めていた。しかし約束の日の前日、彼女から「このカフェでお願いします!」ときちんと連絡が来てしまった。行くつもりが全然なかった私は動揺しながら「ごめんなさい、親が危篤で実家に帰らなくちゃいけなくなって……」とこれまたとんでもない嘘をついた。勝手に親を危篤にするの本当に良くないと思う。

 四人目がなかなかに面倒くさかったんだけれど、正直一番収穫はあった。まず最初に電話でやりとりをした男の子をSさんとしますね。Sはなんと驚いたことに同い年。大学には行っていないようだった。Sはめちゃくちゃ気さくで、パリピグループの子犬キャラみたいな男だった。絶対河川敷でバーベキューやってるし、買い出しとか率先して行っちゃうタイプ。私が一番嫌いな人種だ。そんなSは持ち前の明るさで(私がSの何を知っとるんじゃという話なのだが)自己紹介をし、私にも自己紹介をするように求めた。そして私の話を最初から最後まで傾聴し、めちゃくちゃに褒めてきた。「よしこさんはすごく話しやすいし、考え方もしっかりなさっててすごいです!」あ~~~~~~~~こういう感じで付け入ってくるやつね~~~~~~~~。しっっかりと私を褒めた後、Sは軽く自分のビジネスの紹介をした。といっても本当に軽く、といった感じで自分がなぜこのビジネスを始めたか、ということを自らの夢や目標を交えながら語ってくれた。そしてSは「これを始めて本当に尊敬できる人と出会えた よしこさんも是非その人と話してほしい」というようなことを私に言った。Sはここで「あなただから」その人と話してほしい、「あなただから」一緒にビジネスをしたいということを強く強調した。誰にでも言うわけじゃない、ここでこんな風に答えた人は誘わなかった、というような。なるほど、この方しっかり勉強なさってますね、人の心理みたいなものを。パリピのSにそんなこと言われて正直悪い気はしない。私は二つ返事でOKしたのだった。Sが尊敬している人、とやらを話すまでには2,3日の間があって、その間にSは細かに連絡を取ってきた。「今日お時間ありますか?」と言って電話してきた日は全くビジネスとは関係ない雑談を15分ほどしてきて、どうでもいい男に時間を費やしたくない私は心底イライラしたのだが、多分これなんていうか親しみを持たせるための作戦だったんだろうな。そうしてやってきた勝負の日。空きコマ二つ分を使い、サークルのBOXで私は彼らと電話をしたのだった。

 Sが尊敬しているらしい男(Tとする)は、正直あまり良い印象は無かった。なんか高圧的で、早口で、典型的な「仕事できる『風』の男」みたいな感じだった。Sが積み上げた土壌をこいつが割と台無しにしている感じの印象を受けた。話す順番間違えてねえか?なんでSはこいつを尊敬しているんだ?Tは軽く私のバックグラウンドを聞いた後、自分の話を始めた。実家暮らしのため、通学に長い時間を費やしておりバイトが碌にできなかったこと、片親で生活が厳しいため奨学金を借りていること、サークルにも入れていないこと……などなど苦労人要素が勢ぞろいしている方だった。彼はそれでなんとか稼げる手段としてこのビジネスに行きついたらしい。長々一時間ほどTは自分の話をしていた。長い。本当に長い。やっとこのビジネスがどんなものか、という話を始めた時には私はすっかり飽きていて、小説家になろうというサイトで「悪役令嬢は隣国の王太子に溺愛される」という転生ものの小説を熟読していた。

 Tが言うには、彼らがやっているビジネスは要するにただのアフェリエイトだった。今も昔も人気ですね、アフェリエイト。私が小学校の時からすでに横行していましたね。アメブロでよく見ました。Tは「企業が収入を得る方法は二つあって、シンプルに売り上げを伸ばすことと、事業を拡大することなんだよね。これも同じで、よしこさんがやってくれるってなると、要するによしこさんが支店になるわけ。それでよしこさんがそこで得た収入は僕らの収入にもなる。コンビニとかもそうでしょ?」すげえ、要するにねずみ講じゃん。ねずみ講ってこんな上手い言い方出来るんだ。言葉ってすごいな。彼らは主に旅行会社(それもよく分からん海外企業で、まだ日本に進出していなくて、認知度は低いからやるなら「今」らしい。時間は限られているんだとか)の広告を出して収入を得ているんだと。彼らが実際に旅行して、その旅行の様子を広告として使う。だから、楽しみながらお金を稼げる!みたいなのが彼らの言い分。しかし、タダで旅行に行ける、なんてことは全く言っていないので(もしそうだったら前面に押し出してアピールするだろう)旅行はおそらく自腹になるだろう。そのうえTはこういった。「僕の両親も海外旅行とか好きで、よく二人で行ってるんですよね」おい、待てよお前さっき片親って言ったよな。なんで両親が一緒に旅行に行ってるんだよ、円満じゃねえか。すっかり信用がなくなり始めたところでTは「費用」の話を持ち出した。「ちなみになんですけど、一応講習会の費用と入会費で10万円ほどいただいています。でもこれってすごく破格で、めちゃくちゃ安いほうなんですよ。僕もいろいろなビジネスやったんですけど、高くて100万円とかかかるところがあって、結構借金とかしたんですよね。でも、ここなら……」片親でお金がないのに100万円のビジネスやる人とかめちゃくちゃ関わりたくないんですけど。勘弁してくれよ。人間性に問題あるだろそれ。さらにTは続けた。「このビジネスは最初は月三万円は確実に稼げます。それからちょっとずつレベルアップしていって最終的には月七桁稼ぐこともできます。Sくんは実際あと少しで七桁突破する目途が立っています」どういう仕組みで広告収入で個人に七桁入ってくるんだろう。私がめちゃくちゃ無知なだけかもしれないんだけど、一つの企業をPRするだけなのにたった一人に七桁もの収入が入ってくるってよくわからない。広告にそんな費用かけられるってめちゃくちゃに大企業じゃん。しかもその企業はまだ日本には進出してないっていうじゃん。ホームページ見たけどホームページに金かけてなさそうだし、怪しさしかないじゃん。っていうかそもそも私は10万円もなかったので、丁重にお断りしました。そのあともう少し値段の低いプランも紹介されたけど、「あ、これいわゆるドアインザフェイスだな」と思ってやっぱり断りました。急に態度が悪くなって一瞬で電話ぶち切られたので悲しくなっちゃいましたね。二時間も話したのに。Tは態度が悪いからどうでもいいけど、嘘でも愛想よくしてくれたSには申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

 

四人目のSとTに関しては、本当にちゃんと何かのビジネスをやっているんだな、というのを感じたんですけど、結局SNSに横行するビジネスアカウントのやつらが何者なのか、ってはっきり分からなかったです。どうしてみんな大体同じような文面でDMを送ってきて、同じような手口なんでしょう?ああいう人たちもきっと生身の人間で、それぞれ考えを持ってああいうことをやっているんだろうし、すごい気になるんですよね。今回電話で聞いたような建て前じゃなくて本音の部分が。多分それって本当に内部に入ってみないと分からないんだろうけど、そもそもそんなお金もないし、引き込まれたら怖すぎるし。

 

そもそも、もっとうまいやり方あるでしょ。四人目のSとTはすっごく惜しかった。公衆みたいなのがしっかり行われているんだろうなって思いました。なんか私もやってみようかな、稼げるとホラを吹く謎のアカウント。

ホストクラブで危うく心をぼったくられかけた話

 某日、ふとホストクラブに行きたくなった。みなさんご存じのあのホストクラブである。一度行けば泥沼にハマるとされるホストクラブである。ホストなんて、ホス狂とかドンペリシャンパン要求されるとか、そういうイメージしかない。「もう少しよしこちゃんがお金出してくれたら一緒に暮らせるんだけどな……」「俺もお金貯めないとだからさ(夢のために)、まだお店やめられないんだよね。(だからよしこちゃんとはまだお付き合いできないごめんね的な表情)」とか言って金を搾り取っていくイメージしかない。ごめんねホスト、行ったこともないのに。さて、ホストに行くにあたって私が一番心配したのはもちろん金銭面である。金を搾り取っていくイメージしかないホスト、そりゃ一番の懸念材料はお金になるわ。ネットで探すよりも、行ったことがある人に聞くほうが信頼できる。そう思った私は、身の回りで唯一ホストに行ってそうな先輩にLINEを送った。

 結論から言うと先輩は別にホストクラブに行ったことはなかった。とんだ濡れ衣である。申し訳なさすぎる。かくして、私は先輩と共に祇園のホストクラブへ向かうことになったのであった。ちなみに、この先輩と二人きりで会うのはこれが最初であった。さてどこのホストクラブにしようか、といろいろサイトを見てみると、たいていどこのホストクラブも初回のお客は飲み放題1時間1000円、とかで入れるみたいだった。いやいやでもあのホストクラブだぞ?ぼったくられるに決まってる。謎に高いお通しを出されるとか、TAXがやたら高いとか、ホストたちの分のお酒代を払わなくちゃいけないとか、なにかあるはずだ。私はめちゃくちゃ疑り深かったし、ホストには緑色の血が流れていると思っている女だった。細心の注意を払ってお店を選んだのだが、なんとそこの店、つぶれていた。いやあ、やはりホスト界隈もなかなか厳しい経済状況を強いられているのだろうな、うんうん。次に向かったホストクラブはなんとその日に限って三人しか在籍していなかった。しかもお客さんいなかった。

 「普段はもっといるんですけどね~、今日だけ3人で」

 「もっとカッコいい人沢山いるんですよ、いつもは。まあ一番カッコいいのは俺だけどね!」

 「今ならこの三人を二人占めできますよ☆」

 すげえ、ホストすげえ。何がすごいって、今日は三人しかいないという情報しか出していないのに、随所でしっかりアピールしてくるところがすごい。しかもめっちゃイケメンだった。とりあえず一旦外に出たものの、思い出してみてもめちゃくちゃかっこよかった。先輩は「なんか年近い男の人三人と飲んでいてもただの飲み会みたいだ」と言っていた。確かに。とりあえず次のお店へ向かった。次のお店は営業日で営業時間なはずなのにドアが開かなかった。無念を抱えて次のお店へ行くと、ドアは開いていたものの準備中だった。頼むからネットに営業時間を書いてくれ。

 やっとの思いで営業していてそこそこ人数もいるホストクラブにたどり着いた。若いお兄さんが丁寧かつ優しく出迎えてくれる。

 「初めてですか?ちょっと身分証確認させてください……えーっとこれどこ見ればいいんですかね」

 おっ、慣れてない感じなのが可愛いですね。私はなんか焦って三回くらいスマホを落としてしまった。そしたら若いお兄さん、「めっちゃ落とすやんw」って、なんだお前いきなりフランクになってくるやん。ホストかよ。ホストか。席に案内されて、いきなりフランクになる系お兄さんがお店の説明をしてくれた。最初、ホストが10分くらいずつ交代して席についてくれる。1000円で飲み放題だから好きなだけ飲んでくれていい。ホストの分は一杯1000円くらいで払うことになるけど、初回はホストの方も長く席にいるわけじゃないから頼まなくていい……とのこと。「お姫様たちが気に入った人を最後に指名してください。そこから延長することもできます」この人いまお姫様って言ったよ。お姫様って言ったよ。私はどこの国のお姫様なんですかね!

 最初に席に来てくれたのは私と同い年のお兄さんだった。最初に名刺を渡される。新人さんらしく、とてもとても初々しい。可愛い。緊張してるのかな。黒髪で目が大きくて、ちょっと色白で、ずっと不安そうに目をきょろきょろさせている人。彼は学生さんで、ちょっと「いやいや僕なんて陰キャなんで!」みたいなスタンスの人だった。マジでこれ母性くすぐってくるやつだ。頑張ってほしい。好きなタイプとか出身とか聞かれて、気がつけばもう時間になって、「よかったらまた指名してください」という言葉と共に彼はいってしまった。うーん、名残惜しい。可愛い。

 二人目は、さっきのいきなりフランクになる系お兄さん。ちょっと古着系男子っぽい雰囲気。「話すのが好きで」と語る彼は確かにめちゃくちゃお喋りだった。「すごい喋りやすいので嬉しいです」と持ち上げてリップサービスもしてくれた。(リップサービスって言い方よくないわね) 仕事の愚痴なんかもちょっと挟んでくれたりして親しみやすさを感じさせるのが上手い。あとお酒に詳しい。いいね、お酒に詳しい男、いいね。入って半年も経ってないとは思えないですお兄さん。

 次にやってきたのは「これだよこれぇ!」みたいなホストだった。ノリも見た目もホストのそれ。テンションぶちあがる。そもそも名刺の渡し方からしてやばかった。仕草がいちいちホストだった。お代わり何にしますか?って言われて焦ってそんなに飲みたくもない中二病みたいな名前のドリンクを頼んでしまった。さっきのいきなりフランクになる男が「トマトジュースで口に合わないかもしれないので、その時は言ってください、作り直すので」と声をかけてくれた。たしかにめちゃくちゃ口に合わなかったので呼吸を止めて一気飲みした。 「好きなタイプとかもう聞かれた?聞かれたでしょ。あいつらね、俺の真似してんのよ」 あーっ!そうそうそういうの欲しかった!メイクとかもちゃんとホスト、プロだねえ。立ち去り際に「俺も学生なんだよね」と言い残していったのがめちゃくちゃ気になってしまった。お前も学生なんかい!!あれが学校で授業受けてる姿を想像できなかった。  

 四人目はあとで調べたらお店で人気ナンバー3の人だった。うん、わかる、めっちゃわかる。あれは人気だと思う。爽やかイケメン。笑顔がまじで可愛い、キラースマイル。ちょうどいいくらいにこっちをからかってきたり、程よく自虐も混ぜてきてて、いきなり小声になってここだけの話だよみたいな雰囲気を出してきたり、苦労してる様子も垣間見えて、かといって卑屈でもなく、友達少なくってみたいな寂しげな感じを出してきて、聞き上手かつ話し上手、えっお前はモテ男バリューセットか?よく10分そこらで自分の能力を遺憾なく発揮できるな、その力をわたしの就活の時とかに分けてくれないかな。お酒全然詳しくないのも可愛かったです。   

 五人目のお兄さんも苦労してる感じの人で、社会人経験があるらしかった。溝端淳平とかDAIGOに似てる優しいイケメン。格闘技を元々やってて、ジムのお金を貯めるためにホストで働いているんだと。えーーっ、貢ぎたくなるやつ〜〜!ちょっとスマートすぎない感じがとても可愛かった。名刺がなぜか一人だけ手書きなのも萌えポイントだった。  

 最後にスタッフの人が来て、誰を指名するか尋ねてきた。ここでする指定はどうやら「送り指名」というらしく、指名した人が出口まで送ってくれるらしい。(あとで調べた)私はもう少し話してみたいと思ったフランク男、先輩は三人目のモテ男バリューセットを指名した。「送り指名、久々にもらえて嬉しい」と語るフランク男。かわいい。さらにフランク男がここで仕掛けてくる。 「さっきの飲み物大丈夫だった?甘いのが好きって言ってたから、作りながらこれ絶対まずいだろって思ってたんだよね」  あーーーーーーーー好き。これは好き。いろいろ好き。これは卑怯だろ。しかしこんなので陥落するような女じゃないのでそこのところは分かって欲しい。 モテ男バリューセットもやってきて、私と先輩、フランク男、モテ男バリューセットの4人で話したんだけどこれがまたよかった。目の前で繰り広げられる男2人の掛け合いが良い。腐女子時代の私が蘇りそうになった。危ない危ない。お酒に詳しい後輩とお酒を全然知らない先輩のカップリング、控えめに言って最高だった。カップリングとか言っちゃったよ、落ち着け私。最後にそしてLINEを交換。えっ!?いいんですか!?LINEを!?モテ男バリューセットは私の先輩に「交換は担当とだけだよ!」みたいなことをおどけて言ってる。担当って、響きがよすぎん???LINE交換したあと、スタッフさんが延長希望するかを尋ねてきて、私たちは時間もお金もそんなになかったのでお店を後にした。フランク男とモテ男バリューセットは私たちをエレベーターの前まで送ってくれて、とっても優しかった。でも彼らはさすがにエレベーターのボタンを押すことまではしてくれなくて、そこはミュゼの店員の方が優しいかなと思った。お店を出てちょっと歩いたくらいに指名したフランク男からLINEが来た。まじでタイミングがいい。世の中の男はデートの後はこのくらいのタイミングでLINEを送るべき。間違っても1時間とかあけるんじゃない。私もLINEをすぐに返信してホクホクしていた。幸せだ、例えまやかしでも男にチヤホヤされて幸せだ、これは通うし貢ぐわ。わかる。

 ただそう思えたのもフランク男からインスタよかったらフォローして!と言われるまでの間だった。フランク男は超絶おしゃれなインスタをやっていた。身近にいたら「おしゃれだなぁ」って敬遠するタイプの投稿。センスがめちゃくちゃあって、どこか芸術家気質な感じ。正直わりと好きだけど、私が彼に求めていたものとは違った。最低なことを言うようだけれど、私が「ホスト」に求めていたのは人間味とか個性じゃなくて、どれだけ自分を満たしてくれるかだった。人間味とか個性とか、そういうのは身近な人間で事足りていてる。わざわざホストに求めるものではない。私が身近で得ることが出来ない異常なまでの持ち上げとか、いつまでも好意的な眼差しとか、そういうのを、私はホストに求めていたんだなと気付いた。なんというか、夜の仕事をやる上でのヒントをここで見つけたり、っていう気分だった。何を言ってるんだ私は?

 かくして、私はすんでのところでホストにはハマらなかった。そもそもハマるようなお金もなかった。

就活を意識した風なイベントに参加して打ちのめされた

 つい先日、ちょっと意識が高い感じのイベントに参加してきました。DMでいきなり招待が来て、「なにこれ怪しい!楽しそう!」と思って参加したのになんかめちゃくちゃちゃんと意識高いやつでした。どうやら就活を意識したものみたいで、企業の方の話を聞いたり、ビジネスモデルをグループで考えたりしてきました。

 「やばい、これめっちゃちゃんとしたやつだわ」 11時から19時まで、私はこの空間に缶詰になるみたいです。左に座ってる男は刈り上げてオシャレな七三でハイネックを着ていてベンチャー企業社長にいそうな感じのタイプで(っていうか絶対こういう社長見たことある)、右に座ってる男はちょっとパーマがかかった髪に眠そうな瞳でクリエイティブな雰囲気漂っていた。同じグループにはこの2人以外にも2人の男の人がいて、私以外4人ともみんなmac愛用者だった。私みたいにスクリーンがひび割れたDellを使っている人は一人もいなかった。スマホがひび割れてるのも私だけだった。めちゃくちゃ貧乏人みたいだった。左側に座っていた男はガムの消費量が明らかにえぐいことと、ガムのくわえ方から、喫煙者であると予想した。すると実際に喫煙者であったことが判明した。南無三。

 

 「市場経済」についての説明を受ける際には、みんな活発に手を挙げて発言していた。私も発言したけど全部トンチンカンだった。私以外のグループのメンバーは、macのなんか背景が黒でヤラシイ雰囲気のメモを立ち上げてそこに打ち込んでいた。私はこの間印刷に失敗したレジュメの裏にボールペンでガリガリ書いてた。恥ずかしくて死にてえなってなってた。

 でも市場経済の話自体はすごく興味深くて面白かったんですよ。「縄文時代、黒曜石と翡翠は本来決まった地域にしかないのに分布が広がってるから、贈り物としていろんな地域に贈られていたのがわかる」みたいな話を聞いた時は「あっ!これ世界史でやったやつだ!」って1人でニヤニヤしましたね。ただ、左隣の男がヨーロッパ中世くらいの話の時に「これは人権宣言の前だから〜だよね」って言ってきた時はイラッとした。なんか悔しくてめっちゃイラッとした。知ってる知識をこういうところで披露するのはさぞ気持ち良かろうな。 賢い人って常に気持ちいい思いしてるんだろうな。賢くなりたいな。

 他にも「市場経済の本質は幻想価値をつけて安いモノを高く売る事で、例えばダイヤも市場には少ししか出回っていないから価値があると幻想を抱いてしまうけれど、ただ出回る量が調節されているだけだから実際の価値はそこまででもない。ダイヤモンドは永遠の輝きって言われるからプロポーズに送られるけど、燃やしたら炭だからそこに永遠なんてないんだよ」なんて話もされました。こいつら生きてて楽しいのかな……。

 日本経済転換の話も聞きましたね。豊かさの象徴である三種の神器、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の普及率が1970年には90%を超えたと。私の家にテレビないし、テレビと冷蔵庫も壊れつつあるし、私の豊かさの象徴はどこにいったんでしょう。

 こんな感じで、意識高い系就活セミナーってよりは、社会科の授業みたいな感じだった。その後はグループでの作業にうつったんですが、死にたくなりました。what is 私の存在意義????よしこちゃんはずっとオウムみたいにみんなの言ったことを繰り返してました。だってIOTの話とかAIの話とかよくわかんない。とりあえずみんなの言ったことを理解することに努めましたが、理解するだけの人間、グループワークに必要ですか?ふええ。今回参加した人の中には、アプリの制作をしている人、webライターの人、美大の人、広告動画を作成する人、などなどとにかくめちゃくちゃなのがいっぱいいて、インドとかに逃げたくなりました。インドに逃げたいです。

 そしてそんな私に追い打ちをかけたのは一人の女の人でした。彼女は言いました。「就活とか始めると本当にできる人いっぱいいてさぁ。インターン運営に携わってる人、ボランティアした人、留学した人なんていくらでもいるんだよね。しかも考え方がしっかりしてる人もたくさんいるから……」

 就活したくないんですけど。なんなんですかね。優秀な人材になりたくないです。地元のミニコミ誌を発行する小さな会社とかでのんびりしたいです。もしくはインドに行きたい……。逃げたい……人材として消費されるなんてごめんだ……誰も私を選別しないで……。

ラブホで女子会をした時の話

 高校を卒業してから、はじめてラブホで女子会なるものをしました。同級生のエロい女と2人で電車に乗りこみ、アホみたいにアクセスの悪いラブホテルに向かいました。地元のラブホテルは大概がめちゃくちゃアクセス悪くて、車じゃないと行けないようなところばかりだった。高速道路の近くとか、そういうラブホテルは安くていい設備の所が多かった。自転車でも行けるようなところは高かったし、あんまり質が良くなかった。私たちはラブホでカラオケをしたかったから、カラオケができて車がなくてもいけるラブホテルを結構一生懸命探した。寒い中、自転車置き場で必死にスマホでラブホを検索したのはいい思い出だ。いやいい思い出なのか?都会だったらもう少し楽に見つかったのかもしれない。

 ラブホテルに向かう前にアオハルでプリクラをとり、電車ではウキウキしながらインスタのストーリーをあげた。まさに女子高生って感じ。当時の私たちはギリギリ女子高生じゃなかったんだけどさ。電車をおりたら普通の田舎だった。住宅街と、畑と道路くらいしかなくて、こんな所にわざわざ来るのはまじでラブホ目当ての人だけなんじゃないかと思った。

 駅からたぶん20分くらい歩いて、突如としてラブホテルが現れた。田園風景の中で明らかに異彩を放つラブホテル。お城みたいな外観だった。入口はなくて、エレベーターでフロントまで上がるスタイル。無人のフロント、なんかインディ・ジョーンズみたいな雰囲気だった。モニターがあって、映像が流れてる。インディ・ジョーンズのアトラクションに並んでるみたいな気持ちになった。 ドキドキソワソワしながら部屋を選んで、部屋の中に入った。めちゃくちゃ広いベッド、めちゃくちゃ広い風呂、ふかふかソファ、私たちのテンションは爆上がり。お風呂にはいり(なんとシャワーヘッドが光る。意味が分からない)、バスローブを着て、買ってきたカップラーメンとか鯖缶とかを食べた。ラブホのご飯ってなんか食べたくないよね。とにかく、それだけでめちゃくちゃ楽しかった。寝っ転がってアホみたいなAVを見たりした。本当にアホみたいなAVだった。流しっぱなしにしてたら、液晶の中の男女は目を離した隙にセックスに突入していた。アホみたいで面白かった。

 お目当てのカラオケは質がゴミみたいなやつで、普通のカラオケのほうがよかったな。当たり前だけど。マイクは全然音拾わないし、音楽を入れようにもそもそも全然リモコンが反応してくれないし、歌詞が出てこなかった。まじで家で歌ってた方がまだマシかもしれん。でもカラオケするって目標は達成したかったから、うろ覚えの歌詞を踊りながら歌った。女同士だったし、最終的に下着姿でカラオケしてた。まあゴミみたいな質のカラオケだからすぐに飽きてやめたんだけどね。今思えば本当にアホみたいなことをしてたと思う。多分やれと言われれば今でも全然やれるけど。

  大人のオモチャも部屋の中で売ってた。ゲーセンでよくある、鍵をクレーンでとってロッカーみたいなやつから景品とりだすの、わかりますかね。あの透明なロッカーを小さくしたみたいなやつの中に大人のオモチャが入ってた。野菜の無人販売にも似てるかな。オモチャの名前のセンスも秀逸で、「ハイパーブラック」とか「いかせるくん」みたいなそんな雰囲気の名称がついてた。そんな雰囲気、と言葉を濁したのは私がオモチャたちのちゃんとした名称を全く覚えていないからだ。今適当に考えたやつである。でも確か雰囲気はそんな感じだった。私たちは記念に一つオモチャを購入した。いやはや吉川くん、アダルトショップの一件といい私はオモチャを買い過ぎではあるまいか?

 ラブホで遊ぶ、といってもカラオケが出来ないとなると布団の上でゴロゴロしたり、AVを見ることくらいしかやることがなかった。私たちは結構すぐにラブホテルを立ち去ることになった。出口の精算機で、部屋の代金とオモチャの代金を払った。ほかの人に会うことは全くなかったので、プライバシーの尊重され具合に感服した。ラブホテルは、人妻と男子高校生のカップルとか、怪しい商取引をする二人組とか、人には言えない性癖を持った女の子たちとか、きっといろんな人にやさしい場所だ。ラブホテルって、素晴らしいと思う。どのラブホテルも、みんな違ってみんないいを具現化したような様相をしている。今までで一番衝撃的だったのは、磔にできる壁と拘束できる椅子を備えたラブホテルだった。壁と椅子にはそれぞれ手を拘束するバンドがついていたけれど、「なんかこのバンド使うのはきたねえな」と思ってしまった。ラブホ利用者の癖に中途半端に潔癖を発揮する人間はなんなんだ?愚か者か?

 私たちは帰る道すがら、次は彼氏と来たいね、だとか、絶対ここに来たらセックスしたくなってしまうね、だとかをキャピキャピと話し合った。私のラブホ女子会の相手をしてくれた彼女とは最近会えていないが、つい先日「今度は歌舞伎町のホストクラブにでも行こう」と話した。どうして普通にタピオカとか飲まないんでしょうね。これだからダメなんでしょうね。

 

 これは余談ですが未だに彼氏とラブホテルに行くというあの頃の夢はまだ叶えられていません。ごめんね、あのころの私。もっと頑張るね。